コラム

終活でよく聞く?ワード 成年後見制度とは②

前回のコラムでは成年後見制度のうち、法定後見制度についてご紹介しました。
法定後見制度とは、判断能力が不十分になった後に後見人を選ぶ制度です。

判断能力とは、物事を自分で「考えて」「選んで」「決める」能力のことです。

今回は、まだ判断能力が十分あるうちに、サポートしてくれる後見人を選ぶ制度である任意後見制度について紹介していきます。

任意後見制度とは


今はまだ判断能力が十分ある人が、ひとりで決められるうちに、認知症や障害をおった場合に備えて、あらかじめご本人自らが選んだ人(任意後見人)に、代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度です。

法定後見の場合は、家庭裁判所での審判によって後見人がつきますが、任意後見の場合、本人が自分の力で決められる時点で準備するので、本人と任意後見人に選んだ相手との契約になります。

任意後見契約の3つの類型


任意後見契約には①将来型、②移行型、③即効型の3つの類型があります。どの類型を選択するかは、本人が自由に決めることができます。
最も一般的なものは移行型になります。

将来型

任意後見契約のみを結びます。認知症になるなどして、自分にとって適切な判断ができなくなってしまった時のために後見人がつくものです。
将来型は、効力が発生するまでにある程度の期間が経過する可能性があり、その間に本人の意思が変わってしまうことも考えられます。本人は任意後見人に選んだ相手と定期的に連絡を取り、状況を把握してもらう必要があります。

移行型

任意後見契約と同時に財産管理や身上保護等の事務を行うことを内容とする委任契約(生前事務の委任契約)を締結する類型をいいます。
将来型の任意後見契約では、加齢や病気等で寝たきりになったとしても、判断能力が低下しなければ契約の効果が発生しませんが、この移行型の任意後見契約では、認知症への準備だけでなく、判断能力が低下していなくても入院したり、寝たきりになった時にも後見人が動けるようになります

即効型

すでに本人の判断能力が少し衰えているけれど、契約を締結する能力があり、すぐにでも支援が必要な場合に利用されるものです。

手続きの流れ


任意後見の手続きは次のような流れになります。
①相談
②任意後見契約締結
③任意後見監督人選任の申立て
④任意後見監督人の選任
⑤任意後見契約の効力発生

任意後見の利用を考えた場合、自分が感じている将来への不安の対策として任意後見が有効かどうかを相談するところから始めるといいでしょう。

前回の法定後見でご紹介した相談先と同じです。
市区町村に設置されている地域包括支援センター、日本司法支援センター(法テラス)、成年後見制度に関わる専門職の団体(弁護士会、司法書士会、社会福祉士会、税理士会等)で相談を受け付けています。

相談の結果、任意後見を利用することになったら、後見人になってくれる人を探します。もし後見人を頼みたい人が決まっている場合は、相談の時点で同行してもらい、後見人の仕事について知っておいてもらいましょう。
後見人の心当たりがない場合、相談先では候補者の紹介も行っています。

候補者と契約する意思が固まったら、必要書類を揃えて公証役場で契約を締結します。
本人の印鑑登録証明書(又は運転免許証等の顔写真付身分証明書)、戸籍謄本、住民票と、候補者の印鑑登録証明書(又は運転免許証等の顔写真付身分証明書)、住民票が必要となります。

これらの準備は専門家に依頼することもできます。

その後認知症などで判断能力が低下したら、後見人になる人が所定の書類を用意して、家庭裁判所に手続きを行います。家庭裁判所は後見人がきちんと後見業務を行っているかどうかチェックする「任意後見監督人」を決定します。

そこから任意後見人としての活動が始まります。

任意後見人に任せられること


任意後見人に任せることが出来るのは、自分の代わりにやってもらうこと(代理権)だけとなります。法定後見では、類型や申立ての内容によっては、不要な契約を取り返したり(取消権)することもできる場合がありますが、任意後見人にはできません。

万が一、悪徳業者に騙されるようなことがあった場合は、途中で法定後見手続きをして、取消権を与えてもらうことになります。

自分の代わりにやってもらうことは、任意後見契約で決めておきます。例えば財産管理、入退院の手続きや支払い、介護サービスの契約や支払いなどです。契約書に書いていないからできません、とならないように、やってもらう可能性のある項目は入れておくことをオススメします。

任意後見はどんな場合に適しているの?


任意後見は自分の将来に備えるためのものなので、全ての人が対象ですが、子どもや任せられる親族がいない人ひとりで生きるために準備しておきたいという人に適しています。

また、自分の世話は絶対に家族にしてほしいという人にも任意後見は有効です。
法定後見の記事でも触れましたが、法定後見では希望通りの方が後見任になれるとは限りません。任意後見では自分の選んだ人を後見人にすることができるので、自分の世話をしてもらう人を選ぶことができます。

任意後見にプラスすると効果的なもの

見守り契約

任意後見が始まるまでの間に、後見になる人が定期的に本人と連絡を取っていくものです。本人の自宅を訪問して面談することにより、本人の健康状態や生活状況を確認することができ、任意後見をスタートさせる時期を判断するための契約です。

生前事務の委任契約(任意代理契約)

頭はしっかりしているが自分で動き回るのが難しくなった時に、預貯金の引き出しや様々な契約をやってもらえるようにしておくものです。
「移行型」として紹介したタイプで、多くの任意後見でプラスされています。

死後事務の委任契約

後見人の活動は本人が亡くなると終了するので、亡くなった後のことは親族などに任せますが、葬儀が出来るような親族がいない場合、あるいは親族には任せたくない場合に結んでおく契約です。亡くなった後の親族などへの連絡や葬儀社の手配、役所の手続きなどを頼むことができます
遺産相続の手続きは対象となりません。

まとめ


任意後見は、将来認知症や障害の状態になった時のため、自分の将来のために備えるものです。

次回は成年後見制度でできることやメリット・デメリットについてご紹介する予定です。

トカノハートでは、東京23区・関東全域で生前整理の代行を承っております。
ご依頼を検討されている方はお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!